5月3日~4日(天候 晴 稜線強)
若い頃よく登った赤岩尾根を40数年ぶりに登り鹿島槍から爺ヶ岳へ、そして近頃、積雪期のルートとして利用されている爺ヶ岳南尾根を下山した。
鹿島・爺ヶ岳の積雪期ルートと言えば北から天狗尾根、東尾根、赤岩尾根、爺ヶ岳東尾根しかしらない私にとって「爺ヶ岳南尾根」は、初耳のルートであった。誰かが登り、ネットに公開すると我も我もと登るものが続き、こんなルートができるのだろう。私達は下山に柏原新道を使う予定をしていたが、斜面に付けられた新道は、まだ積雪が多く通れないと言うことが、登ってからわかった。柏原新道が使えないのなら以前、下山したことのある種池山荘前の沢を直接下った方が早いので、そのようにしようかとも思ったが、爺ヶ岳南峰まで来てみると、ここまで結構な人が登下山に利用しているようだ。「じゃ、下りてみようか?」ということになり、新しいルートとして下山に利用してみた。
まあ、今回の山行は以上のような顛末であったが、登る前に何もかもわかってしまうと面白くないので、登る山の情報は、あまり得ないようにしている。特に真っ赤な線だらけのネット情報は…。
3日の早朝、登山口のある大谷原(「おおたにはら」でなく、「おおたんばら」と言う)に着くと10台余りの車が止まっている。今時、こんな所から登る人も結構いるもんだなぁ、と感心していたが、主稜線までの間で出会った人は、下山して来る2人と追い越された大学生3人パーテーの2組だけ。やはり釣り客が結構多いみたいだ。
新しい林道と新しい堰堤を次々と越えて、最後の堰堤に谷を越える手段として堰堤の中にトンネルが作ってあり、冷たい水に浸からなくてよかった。が、少し遠回りになり赤岩尾根の取り付きが残雪に覆われてわかりにくい。昔の記憶を頼りに小さな尾根に踏み跡を見つけ傾斜の急な道をドンドン登る。少し登ると道は雪に覆われ不明瞭になる。とにかく上へ上へと登るが、急な残雪の下方は、大冷沢の谷底まで続いている。スリップしたら怪我で済まない。一歩ずつ慎重に登るが、こんな谷を見たことがない。40数年前には、登山道の両側を木々が覆っており、ゆったりと登れた。この間に尾根が崩れ、新しい木々が育ってきているのだろうが、下まで見えるとあんまり気持ちのよいものではない。おまけに岩場まで出てくる。年月が経つと、こんなに変わるものか。剱岳八峰、前穂北尾根、五竜岳なども久しぶりに登ってみると、その変化にビックリする。以前は、雪の大地であった高千穂平には、ほとんど雪がなく、窪地にたまった雪の上に小さなテントが一張り張ってあった。昔は雨の後、テント周りの雪が溶け、50㎝くらいの雪の台の上にテントがあったことを覚えている。
後立山の主稜線に出るところは、トラバースと直登ルートがあるが、トラバースの方は、慣れないと難しく、また今までに何件となく事故が起きているので、稜線への直登ルートを登る。記憶では細い尾根にダケカンバなどの灌木がたくさんあったが、今では岩稜がむき出しになり、傾斜の強い一枚の斜面に続く全く気の抜けない尾根になってしまっている。
稜線に出てホッとするまもなく、冷池のテント場目指して下る。コルからテント場まで少しではあるが登りとなる。いつ来ても好きになれない登りだ。
テントを張り終え、早い夕食を摂ってシュラフに入るが、20時過ぎに目が覚めてから、足先が冷たくて寝られたものではない。辛抱できず、ごそごそと起き出してザックの中身を取り出し、代わりに足をザックに入れて寝る。朝まで10回くらい目が覚めたが、なんとか寝ていた時間もあったようで、3時36分に目が覚めたときはホッとした。
相変わらず風の強い稜線を、3時間余りで鹿島槍山頂を往復する。山頂はうかつに立っていると飛ばされそうになる強風。3月か?山頂から滑落し亡くなった女性がおられたが、その時もこんな風だったのだろうか?
早々に山頂を退散してテントを撤収した後、爺ヶ岳を目指す。テント場で今朝登ってきた人に「どっから登ってこられたん?」と聞くと、「冬道です。」「そんな道があるんですか?」「南峰を越えた所から尾根についている道です。」と話すうちに、柏原新道が通れないことを知る…とすると、どこから下りようか?と思案するが、大谷原へは爺岳東尾根が近いし一番いいのだが、種池小屋前の沢も早く下りられるから惹かれる。しかしこんなに雪が少ないと谷筋が出ているだろうし…結局、南峰まで行ってから考えようと??
南峰に着くと、その冬道らしき道がよく見え、結構な人が登り下りしている。「これ下りようか?」と衆議一決、アイゼンを外し、一目散に下山を開始する…が、岩の積み重なったような尾根は、全く歩きにくい。残雪の上に出てからは、快適に飛ばすが、雪が切れたところからは、木の根っこが絡み、所々残雪が残る歩きにくい、なんの面白みもない道。滑ったり転けたりしながら下り続け、やっとの思いで扇沢出合に着いた。この下りが今回の山行中、一番しんどかった。 記者:kamemaro
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